◎上院版CLARITY ActがRipple社に迫る「XRPとの切り離し」

上院版CLARITY Actを前提にすると、仮にXRPの二次流通市場が法的に整理され、XRPがデジタル・コモディティとして扱われる方向に進んだとしても、それだけでRipple社とXRPの問題がすべて解決するわけではありません。

重要なのは、単純に「XRPは証券か、商品か」ではなく、XRPの価値を実際に誰が形成しているのかです。

上院版の制度設計では、特定のデジタル資産について、起源主体や関係者の起業家的・経営的努力が価値形成に重要な間は、継続的な情報開示の枠組みが続きます。そして、そのような努力から実態として離脱したことを示せる場合には、継続的な開示から離脱するための出口が用意されています。

つまり、法律がRipple社に「XRPを売れ」「XRPLの開発から撤退しろ」と直接命じているわけではありません。しかし、Ripple社がXRPやXRPLの価値形成に関わり続ける限り、継続的な開示の枠組みから抜けにくく、そこから完全に離脱するには、企業とトークンの経済的な関係を実態として切り離す必要があるという構造になっています。

ここにRipple社の大きなジレンマがあります。

Ripple社がXRPLの普及を進め、XRPの利用を拡大し、企業提携を増やし、「Ripple社の成功がXRPの価値を高める」という投資ストーリーを強めれば強めるほど、Ripple社の起業家的・経営的努力とXRPの価値は無関係だと言いにくくなります。

さらに、Ripple社が巨額のXRPを保有し、その売却方針や市場への供給がXRPの価格に影響し続けるなら、市場は今後もRipple社の保有量、業績、経営判断、企業提携、XRP売却方針を重要な判断材料として見続けることになります。

つまり、Ripple社がXRPを大量に保有し、Ripple社がXRPの普及を主導し、Ripple社の成功がXRP価格上昇の材料とされ、同時にRipple社の売却が価格下落要因として警戒される。

この構造が残る限り、XRPは特定企業と強く結び付いた「企業トークン」であり続けます。

そして、企業トークンであり続けることの問題は、単に開示が続くことではありません。

企業トークンである限り、企業リスクが続きます。企業が規制対象である限り、規制リスクが続きます。そして、規制当局の方針は政権交代によって変わり得るため、政権交代リスクも続くことになります。

今の政権やSECがRipple社とXRPに好意的だったとしても、将来の政権交代によって規制方針が変われば、「Ripple社の活動はXRPの価値形成にどこまで影響しているのか」「本当に企業とトークンは切り離されているのか」と再び厳しく問われる可能性があります。

XRPがコモディティと分類されることと、Ripple社との関係から生じる企業リスク、規制リスク、政治リスクが消えることは別問題です。

だからRipple社が本当にXRPを独立したデジタル資産として確立したいのであれば、単に「XRPはコモディティだ」と主張するだけでは不十分です。

Ripple社の企業価値とXRPの市場価値を意識的に切り離し、巨額のXRP保有と継続的な市場供給への依存を減らし、XRPLの開発や運営をより多くの企業や開発者へ分散させる必要があります。

究極的に目指すべきなのは、単に「Ripple社がなくてもXRPが存在できる」という状態ではありません。

「Ripple社が何をしているかを市場参加者が気にしなくても、XRPが独自のネットワーク利用と需給によって価値を形成できる状態」

です。

Ripple社が成功しても、それだけでXRP価格の上昇が期待されるわけではない。逆にRipple社が衰退しても、XRPLは独立して開発され、XRPは独自に利用され、価値を形成し続ける。

そこまで到達して初めて、Ripple社の業績、経営判断、訴訟、XRP売却方針、SECの姿勢、そして政権交代が、XRP価格を左右する中心的な要因ではなくなります。

本当の非中央集権化とは、法律上のラベルを「コモディティ」に変えることではありません。企業の成功や失敗、そして政治や規制の変化が、トークンの価値を左右しない構造そのものを作ることです。

上院版CLARITY ActがRipple社に突き付けているのは、まさにこの問題だと考えられます。

Ripple社がXRPを成功させるのではない。Ripple社が何をしているかを気にしなくても、XRPが成功できる状態を作る。

それこそがXRPを企業トークンという構造から解放し、企業リスク、規制リスク、そして政権交代リスクから本当の意味で距離を置くための道だと思います。