バリウム検査よりも胃カメラの方が推奨

ところで、人間ドックはコースやオプションにバリウム検査(胃部X線検査)が含まれていることも少なくない。
バリウムと一緒に発泡剤を飲まされ、ゲップをこらえたまま四方へ傾斜する台に必死でしがみ付き、バリウムとガスで張り詰めて苦しい腹部を機械でこね回され……。

「私たち消化器内科医で、自分の検診にバリウムを選ぶ人間は、まず皆無です。
巷では『負担が大きいし、受けても無意味』という意見もあるようですが、これは医学的見地から見ても、かなり的を射ていますね」
  
医学界で多くの経験・知見を重ねてきた石岡院長がここまで語るのには、理由がある。
バリウムは他検査と比べて、決定的に検査精度の差があるのだ。
海外の事例だが、韓国で25万人を対象に行われた調査によると、5年間に1度でも胃カメラ検査を受けた人は、胃がん死亡率が47%減少。
対してバリウム検査を受けた人の胃がん死亡率減はわずか2%だったという。

「早期胃がんは、わずかな色変(赤み)として現れます。
影絵しか見ないバリウムでは見逃されやすく、発見できても『影が映るほど病状が進行してから』になりがちです。
日本は非常に検査技術の高い技師が多いので、多少は成績が上がるでしょうが、それでも『カメラで47%減に対して、バリウムはわずか2%減』という圧倒的な差は無視できません。」

また、石岡院長は「現代人の体内検査は胃袋だけ見ても不十分」と指摘する。
現代はピロリ菌感染者が減少し、昔ながらの胃がんリスクは減少傾向の一方、食の欧米化や逆流性食道炎の増加で食道がん・十二指腸がんのリスクが上がっているのだ。

「バリウム検査はあくまで胃だけ見る検査です。胃カメラのように、口から胃の経路にある喉と食道、胃のすぐ先にある十二指腸までくまなく観察することはできません。
胃しか見ないバリウム検査は、多角的なリスクケアが必要な現代のニーズに合わないのです」

このため、バリウムと胃カメラを同時に受けるメリットも無い。厚生労働省の指針ではバリウムが「毎年受診」、胃カメラなら「2年に1回」が推奨されているが、食道がんリスクの高まる40代ならば、守備範囲の広い胃カメラの方が適切である。