欧州の「2035年エンジン禁止撤回」を巡る報道が騒がしいですね。「EVごり押しは終わった!エンジン万歳!」と叫ぶ人。「いやいや、90%削減目標なのだから実質的にはほとんど変わってないでしょ」と慎重な人。世論は真っ二つですが、僕の見立てはその「どちらでもない」です。

現状を正しく表すなら、「ゴールポスト自体はまだ動いていない。けれど、それを地面に固定していた杭は抜かれた」。という状態です。杭が抜かれているから、風(市場の現実や経済状況)が吹けばゴールポストはいつでもズレるし、なんなら倒れる。そういう不安定なフェーズに入ったと考えるのが正解でしょう。

そもそも、大手メディアが今さら「方針転換か?」と騒いでいるのには苦笑するしかありません。EUの規則には、最初から「2026年の見直し条項」が明記されていました。理想論が破綻しても政治家がメンツを潰さずに逃げるための伏線として極めて重要な条項だったのに、メディアはそれを完全にスルーしていました。

今回の動きは、単にその伏線回収が始まったに過ぎない。これからは市場の現実を見ながら、ゴールポストはなし崩し的に動かされていくでしょう。たまったもんじゃないのは、そういう風見鶏政策に翻弄される自動車メーカーです。「2035年に禁止するぞ」と脅され巨額投資をし、土壇場で「やっぱ柔軟にいくわ」と梯子を外される。欧州メーカーの最大の敵は、中国勢ではなく、政治家やブリュッセルの官僚たちなのかもしれません。