朝日新聞(社説)燃料電池車 支援見直しは不可欠だ

https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S15221208.html

EVとFCVはともに走行中に二酸化炭素が出ない。
ただ、EVには急速充電器が、FCVには燃料を充填する水素ステーションが不可欠だ。

政府はこれまでどちらの整備も補助してきたが、全国津々浦々に重複設置すれば、充電・燃料インフラの採算をとるのが難しい。
どちらかに標準化されれば、量産効果でコストが下がり、消費者の利便性が高まる。
市場ニーズを踏まえてどちらに軸足を置くのか、政府はいずれ選択を迫られよう。
 
過去のビデオや光ディスクの標準化争いで勝敗を分けたのは、いかに多くの競合他社を自陣営に集められたかだった。
 
EVについては、世界の自動車大手の多くが近年、具体的な販売計画を続々と公表している。
課題だった蓄電池の性能向上やコスト削減が進み、従来の高級車から大衆車にも徐々に浸透し始めた。
 
一方、FCVを販売しているのは世界でも、14年に先駆けて量販を始めたトヨタ自動車と、韓国・現代自動車ぐらいしかない。
コスト削減もEVほど進展せず、長年熱心だったホンダも昨年生産を停止した。
EVとFCVとの競争は「勝負あった」かのように見える。

にもかかわらず、政府にはFCVの普及策を見直す機運が乏しい。
水素ステーションを25年に320カ所にする従来計画の達成に向け、来年度の実質的な予算として、前年度より40億円多い150億円を計上した。
 
政府は、FCVの国内累計販売台数が20年に4万台になると見込んでいたが、実際は4千台ほどにとどまる。金科玉条のごとく従来の計画にこだわり続けるのは、妥当ではない。
 
乗用車では劣勢なFCVだが、大型商用車では可能性が残る。
EVより短時間で燃料を補給でき、出力を大きくしやすい長所が生かせるためだ。
決められた経路を走行する商用車なら、限られた数の水素ステーションでも対応できる。
 
水素ステーションには、設置だけで1カ所あたり4億円かかる。
脱炭素社会のためとはいえ、効率を度外視してよいわけではない。
政府は市場やメーカーの動向を精査したうえで、ステーションの立地や設置数を抜本的に見直すべきだ。