日曜の朝、淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、震える指で再生ボタンを押す。デンマーク・ロスキレ、現地時間深夜0時半。EPIC FESTのトリという大役を任されたHAGANEの初海外公演が、ファンカムという細い糸を伝って休日の食卓に流れ込んでくる。「Start Our Journey」の一音目が鳴った瞬間、入場前から沸き上がっていたという「HAGANE」コールの記憶が画面の縁から滲み出てきて、朝の光の中で目頭が熱くなった。日本から駆けつけた剣士はごく僅か。あの歓声のほとんどは、海の向こうで彼女たちを見つけた現地の人々のものだった。

「天下五剣」「剣のレコード」と和の意匠を纏った刃が立て続けに振り下ろされ、MCを挟んだ「Black Cult」あたりから、画面の上部をサーフが次々と流れ始める。掛け声を上げているのは、ドイツから、北欧から集まったメタラーたちだ。彼らはHAGANEを「自分たちで発見したバンド」として、あの夜の主役に迎え入れていた。

中盤で息を呑んだ。Gary Moore風のギターソロから雪崩れ込む「DATT」、久しぶりのJUNNAドラムソロから繋がる「Kagome」。日本でも滅多にお目にかかれない構成が、よりにもよって初の海外フェスのトリで惜しみなく投下されている。「私たちの演奏も見てくれ」――セットリストそのものが、ガチのメタラーたちへの真っ向からの果たし状になっていた。

凪希の英語MCが、堂々と会場を包んでいく。ミドルレンジに宿るあの凄みは、海を越えても一切揺らがない。Sakuraのソロが空気を切り裂き、Sayakaのベースが地を這い、JUNNAのキックが空気を叩くたび、四人の音が一つの塊となって異国のフロアを震わせている。母国語の掛け声がほとんど存在しない場所で、それでも彼女たちは一歩も引かなかった。

カーテンの向こうで日曜の光が強くなっていく。その時差の中に、確かに歴史の最初のページが刻まれていた。後ろ盾の少ない異国の地で、初海外でいきなりトリを任され、それを真っ向勝負のセットリストで応えてみせた一夜。次はスペイン、ドイツ、ベルリン――黒いダイヤモンドが世界という圧力の中で輝きを増していく軌跡を、一人の剣士として必ず見届けにいく。あのロスキレの深夜は、その長い旅の、たった最初の一歩に過ぎないのだから。