現地から届く言葉を拾うたび、あの小箱の温度が伝わってくる。灼熱、という表現が幾度も飛び交った夜。海外の観客の予想外の乗り方に、メンバー自身が面白がっていたという。そして日本の剣士たちを驚かせたのは、旧衣装での登場だった。新しい景色に挑む夜に、あえて歩んできた日々の象徴を纏う。物販は全てはけたと伝えられ、終演後にはフロアに卓を置いてのサイン会まで行われた。二万五千人の飛行場では決して生まれない、距離ゼロの一夜。汗と熱気の中で、ベルリンの剣士たちは彼女たちの素顔にまで触れて帰っていった。

「カジュアルなリスナーのつもりで来たのに、次のヨーロッパツアーがあればできる限りの公演に行くと決めた」——現地ファンのそんな声が、この夜の全てを物語っている。ライブを観る夢が叶ったと綴る者、音源も素晴らしいがライブはさらに凄まじいと唸る者。観客の熱がバンドを押し上げ、バンドの音が観客をさらに燃やす、あの往復運動が言葉の壁を無効にしていた。メンバーの言葉にも達成感が滲む。初の海外ワンマンをソールドアウトで終えた誇り、ドイツの人々と作り上げた最高の夜、そして終演後に味わった初めてのドイツビール。凪希はもう、次なるスペインへと眼差しを向けていた。

前日は二万五千の大地、翌日は二百の小箱。規模も形も正反対の二つの夜を、たった一日の間隔で、どちらも完全に自分たちの色に染め上げてしまった。フェスが「見つけてもらう」場所だとすれば、ワンマンは「待っていてくれる」場所だ。ベルリンには、HAGANEを待つ人々が確かにいた。剣士という名は、もう日本だけのものではないと私はかつて書いたが、その言葉が現実になる速度に、正直めまいがしている。カルタヘナのROCK IMPERIUMを経て、彼女たちは『METAL QUEST』を掲げた凱旋ツアーへ、そして八月二十九日のEX THEATER ROPPONGIへと帰ってくる。クロイツベルクの旧郵便局に刻まれた灼熱の一夜を胸に、一人の剣士として、その旅の続きを追いかけていく。