――――たとえばこんなシチュエーションがありえたのでは?と私は邪推する。

雄大な自然とそこに根付く生態系をリアルに表現するため、 高解像度テクスチャの制作を指揮していると、同じチーム内からふと、聞いてもいないのに反対意見が挙がる。

すでに市場調査でもしたのだろうか、手には細かい数字がいくつも載った紙が握られている。

その言によるとグラフィックに膨大なリソースを注ぎ込んでも、超高画質で遊べるハイスペックPCを所有しているのはユーザーのほんのごくわずかしかいない。

このままでは有限な開発リソースを浪費した上にモンスターを実装する際のハードルをいたずらに高くしてしまう悪手となりかねないと。

今すぐその意見を精査し必要に応じて軌道修正する必要があるが、部下の意見を素直に聞くのは非常に悔しい。

一瞬の逡巡ののち、彼らに踵を返すよう促すと再び指揮を執るため王の座に戻る。

開発リーダーに必要なものは、自身のやりたいように我を買く独裁力だ。

「ワイルズ」には、そんな酷い開発背景があったのでは?と想像してしまうのだ――