>>715
この主張は、ネットワークの混雑対策とシステム全体の物理的な処理限界という異なるレイヤーの問題を混同していると言わざるを得ません。ローカル手数料市場が有効に機能するのは特定の人気アカウントに対するアクセス集中やスパムを弾く場合に限られ、ネットワーク全体で無数のアカウントが同時に更新される真の大量処理時においては、結局全バリデータが「単一のグローバルな状態」を同期・保持しなければならないモノリシックな設計である以上、CPU、メモリ、帯域幅といったハードウェアの物理限界がそのままシステム全体の性能天井になります。スケールアップ戦略におけるハードウェアの限界を指摘する議論は、液体窒素という比喩の有無にかかわらずシステム設計上の正当な指摘です。

また、Web2のデータベース分割とブロックチェーンの分散処理を同列に扱う点にも無理があります。Web2がデータベースを水平分散できるのは、全体の一貫性を保証する中央集権的な管理者が存在するからであり、Web3における最大の強みである複数のスマートコントラクトを同一トランザクション内で相互作用させる「コンポーザビリティ」を維持するためには、容易な状態分割は行えません。ソラナがコンポーザビリティと超高速処理を両立させるために単一状態の並列処理を選択し、その代償としてノードにハイエンドなサーバー環境を要求しているという構造的トレードオフを無視して「ソフトウェア設計を知らないだけ」と切り捨てるのは、分散システムにおけるアトミック性維持の技術的コストを軽視した見方です。

イーサリアムがLayer 1の処理速度をあえて15から30TPS程度に制限しているのは、技術的に高速化できないからではなく、分散性と検閲耐性を最優先に守るという明確な設計上の決断によるものです。ノードの動作要件を上げれば処理速度は稼げますが、ノードを運用できる主体がデータセンターなどの巨大資本に限定され、中央集権化や単一障害点のリスクを招きます。過去に高負荷やバグでネットワーク全体の停止を何度も経験しているシステムに対し、イーサリアムは一般家庭の市販PCでもフルノードを運用できる環境を維持することで「絶対に止まらない分散型インフラ」であることを選択しています。

イーサリアムのスケール問題に対する回答は、Layer 1単体にすべてを詰め込むのではなく、モジュール型構造への移行によってすでに提供されています。Layer 1は最も堅牢なセキュリティとデータの最終決済層に特化させ、実際の計算処理や取引の実行はロールアップに代表されるLayer 2群へ外出しすることで、すでにエコシステム全体として数千TPSを超える高速処理と極めて安価な手数料を実現しています。単一の巨大なスーパーコンピュータを目指すスケールアップ手法と、分散された堅牢な基盤の上に高速処理層を重ねるスケールアウト手法の選択の違いであり、イーサリアムのアプローチこそが国家や巨大資本の介入にも耐えうる真のWeb3インフラとしての最適解です。