ETHがL2の機能不全でL1回帰を強いられているという指摘自体は一定の実態を反映しているが、ここで一つ重要な区別をしておきたい。L2群の乱立による流動性分断やブリッジの摩擦は、共有シーケンサーやクロスチェーンのメッセージングレイヤー、インテントベースの決済抽象化といったコーディネーション層の技術進化によって、原理的には解消・軽減しうる過渡期の課題である。つまりこれは「ハードウェアの性能をどれだけ引き上げても解決できない」種類のソラナのような問題ではなく、「ソフトウェア・プロトコル設計がまだ追いついていない」種類の問題だ。

一方、モノリシックチェーンが抱える特定アカウントへの書き込み直列化という制約は、これとは性質がまったく異なる。同じデータへの競合更新を矛盾なく並列処理することはできないという論理的な制約そのものであり、Firedancerのような物理性能の向上は、この直列処理の絶対的な速度の上限を押し上げることはできても、「単一リーダーが順番に処理するしかない」という構造自体を消すことはできない。

つまり両者を同列の「限界」として語るのは正確ではない。L2の分断は工学的に解消されつつある過渡期の課題であるのに対し、モノリシックの単一リーダー構造が抱える上限は、どれだけハードウェアを進化させても消えることのない性質の天井である。この非対称性こそが、国際金融のように数十年単位で実需が拡大し続ける用途において、需要そのものを複数の実行環境に分散できるモジュラー型のほうが長期の伸びしろが大きいという主張の、より正確な根拠になる。