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その「5年後」のシナリオは、Solana(単一チェーン)側の理想的なベストケースだけを並べ、ブロックチェーンの根本的な物理限界(トリレンマ)を無視した「SF的なポジショントーク」に過ぎません。

「単一の巨大チェーンが、世界中のAIエージェント、電力インフラ、巨大RWA、リテール決済のすべてを1箇所で処理しきる」というシナリオには、構造的な決定打となる致命傷が3つあります。

第一に、「ステート(状態)膨張」とノードの中央集権化リスクです。
世界中のあらゆる取引を単一のL1で処理し続ければ、データサイズは爆発的に膨れ上がります。FiredancerやAlpenglowで処理速度(TPS)をどれだけ上げようが、それを検証し続けるノードに求められるハードウェアスペックとネットワーク帯域は天文学的になります。結果として、ノードを動かせるのが「一部の巨大データセンター」だけになり、国境を越えた「無検閲性・耐検閲性」は崩壊します。巨大なRWA(国家資産や金融インフラ)を扱う機関投資家が、特定の巨大インフラ事業者に依存する分散性の低い単一チェーンに全財産を預けることは絶対にありません。

第二に、「コンポザビリティ(相互運用性)の爆発リスク」です。
すべての取引を1つの箱に押し込める単一チェーンは、どこか1箇所のアプリやプロトコル(例:巨大なAIエージェントのミリ秒単位のスパム取引など)で想定外の負荷や脆弱性が発生した際、ネットワーク全体のガス代(Priority Fee)が跳ね上がるか、ステート全体が影響を受けます。イーサリアムがL2に処理を分散させているのは、この「1箇所の爆発が全体を道連れにするリスク」を隔離(モジュール化)するためでもあります。

第三に、「EVMを飲み込む」という幻想です。
Neon EVMのような互換レイヤーでEVMを飲み込めるなら、なぜ現在進行形でSWIFTやBIS、大手金融機関がSolanaではなく「ネイティブなEVM基盤(Hyperledger Besu等)」で実証実験や規格化を進めているのでしょうか? 企業が求めているのは「超高速な単一決済レール」ではなく、「セキュリティとデータプライバシーを自前で制御でき、将来的に最も分厚いパブリック清算層(ETH L1)へ安全に接続できるプロトコル」だからです。

「ガラケーのように捨てられる」のではなく、「マイクロ決済や高頻度処理のアプリケーション層(Solanaや各種L2)」と「絶対に停止も改ざんも許されない最終清算・資産保管層(ETH L1)」に物理的に分離せざるを得ないのが、コンピューターサイエンス上の現実です。

「すべてを単一の爆速チェーンでこなせる」という思想こそ、過去のWeb2中央集権サーバーの発想に先祖返りしていることに気づくべきでしょう。