ただし、単一チェーン方式にもトレードオフがあります。高性能化すればするほど、ノード側に必要な計算能力、ストレージ、帯域幅などの要求が大きくなります。つまり「速い」というメリットの裏側には、「その性能を維持しながら、どこまで分散性を確保できるのか」という別の問題があります。これはSolanaが悪いという話ではありません。むしろSolanaは性能を優先した非常に合理的な設計だと思います。ただ、単一チェーンだから自動的に金融インフラとして最適になるわけでもありません。

AIエージェント時代についても同じです。AIが毎秒大量のAPI購入やデータ売買を行うなら、Ethereum L1にすべてを直接書き込む必要はありません。L2、アプリケーションチェーン、あるいはオフチェーン処理を使い、必要な部分だけ最終決済層へ集約するほうが合理的です。逆に、この用途ではSolanaのような高速・低コストのチェーンが非常に有力になるでしょう。私はここを無理にEthereumだけで独占する必要もないと思っています。

そして量子耐性については、ここはEthereum派にもかなり厳しく見ておくべきだと思います。2026年2月、Vitalik Buterin氏はEthereumの量子耐性について具体的なロードマップを示し、Ethereum Foundationもポスト量子暗号への移行を明確な課題として扱っています。対象は単純な署名だけではなく、バリデータ署名、KZGコミットメント、アカウント署名、L2で利用されるゼロ知識証明など複数の領域に及びます。つまり「Ethereumは量子問題を何も考えていない」という批判は正しくありません。 ただし、L1だけでなくL2、ブリッジ、ウォレット、スマートコントラクトまで含めた巨大なエコシステム全体を移行するのは簡単ではありません。これはEthereumの現実的なリスクです。そして当然、Solanaも公開鍵暗号に依存している以上、量子耐性の問題から逃れられるわけではありません。

結局、私はこう考えています。Solanaの「速い・安い・単一チェーンでUXが分かりやすい」という強みは本物です。決済、リアルタイム取引、AIエージェント、ゲームなどでは、今後さらに重要になる可能性があります。私自身Solanaを持っているのも、その将来性を評価しているからです。

しかし、「Solanaが速いからEthereumは終わり」「EthereumはL2だから世界標準になれない」という結論は、金融インフラをTPSだけで評価しすぎています。逆にEthereum側も、「分散性が高いから勝つ」「歴史が長いから勝つ」と言っているだけでは不十分です。L2間の流動性分断、UX、相互運用性、シーケンサー、量子耐性などを実際に解決していく必要があります。

そして2026年8月の現時点で一番面白いのは、Ethereum自身がそこを理解して、L2だけに賭けるのではなく、L1そのものの性能を上げながら、L2の相互運用性と共有流動性も改善し、さらに量子耐性まで進める方向へ舵を切っていることです。

だから私は「SolanaかEthereumか」という単純な二択では見ていません。SolanaにはSolanaの強みがあり、EthereumにはEthereumの強みがあります。最終的な勝負は「どのチェーンが一番速いか」ではなく、どの構造が最も多くの経済活動、資産、アプリケーション、金融機関、そしてAIエージェントを取り込めるのかだと思っています。Solanaを持っているからこそ、私はむしろこの競争を冷静に見ています。