714
非常に論理的で、システム工学の観点からの素晴らしい考察だと思います。AWSなどの実例を交えた水平スケーリングの優位性について、大変勉強になりました。
​ただ、こと「金融インフラ」としてのブロックチェーンの設計という視点から見ると、少し異なるアプローチや懸念点も存在するかと思います。議論の参考までに、いくつか別の角度からの意見を書かせていただきます。
​1. Web2(AWS等)とWeb3の前提条件の違い
AWSのような水平スケーリングは「Amazonという単一の信頼できる管理者」が存在し、セキュアな閉鎖網の中で行われるからこそ安全に成立しているという側面があります。
一方、ブロックチェーン(例えばL2やロールアップなど)で水平分散を行うと、異なるセキュリティ基準や管理者(シーケンサー等)を持つネットワーク群に処理を分散させることになります。その結果、チェーン同士を繋ぐ「ブリッジ」が最大のハッキングの標的になったり、流動性が分散してしまうという、Web3特有の構造的リスクが生じています。
​2. 金融における「コンポーザビリティ」の分断
単一のチェーン(モノリシック)の最大の強みは、Aの取引所で借り入れ、Bのプロトコルで運用し、Cで決済する…といった複雑な金融取引が、同じブロック内で瞬時に完了できる(アトミック性がある)点です。
処理を複数のレイヤーやチェーンに水平分散してしまうと、このシームレスな連携が途切れてしまいます。「資金を移動させるための時間と手数料」が余分にかかり、金融システムとしての利便性(UX)を大きく損なうトレードオフが発生します。
​3. 「無限の拡張性」と現実の需要のギャップ
システム工学的に「いつか物理的限界が来るから分散すべき」というのは完全に同意します。ただ、現実の市場需要を見ると、世界のVISAネットワークでさえピーク時の処理能力は数万TPSと言われています。
もし今後のハードウェア(SSDやネットワーク帯域など)の進化によって、単一のチェーンが実用十分な数万~10万TPSを処理できるようになった場合、物理法則の限界を心配する前に「人類が求める処理能力の限界」を十分にカバーできてしまう可能性があります。
​714 さんの仰る「工学的な理想」は全くその通りなのですが、現実のブロックチェーン運用においては、理論上のスケーラビリティだけでなく、ユーザー体験、流動性の維持、ブリッジのセキュリティといった「金融インフラとしての現実的な制約」とのバランスが問われているのだと思います。
​どちらのアーキテクチャが市場に受け入れられるか、システム工学と金融の交差点として非常に興味深いテーマですね。長文での返信、失礼いたしました。