よくある誤解の一つに、「レイヤー2が収益を上げているのだから、もはやETHは必要ないのではないか」という見方がある。しかし実際には、レイヤー2がどれだけ独自トークンやステーブルコインを手数料として採用していたとしても、最終的にEthereumへデータを投稿する段階では必ずETHが必要になる。レイヤー2はEthereumのデータ可用性と最終確定性に依存している以上、その利用拡大は構造的にETH需要へと変換される仕組みになっている。

また、「レイヤー2トークンが存在するのだから価値は分散し、ETHの価値捕捉は弱まる」という指摘もある。しかしこれは価値の“見える部分”だけを捉えた議論である。レイヤー2上でどれだけ多様なトークンが流通しようとも、基盤となる決済層への支払いはETH建てで行われる。つまりレイヤー2経済圏が拡大すればするほど、その活動の一部は必然的にETHへと変換され続ける。これは任意の投資判断ではなく、ネットワーク設計上の必須条件である。

さらに、「ガス代が安くなればETH需要は減る」という見方も短絡的である。重要なのは単価ではなく総量である。ガス単価が下がることで利用障壁が下がり、取引件数が増え、経済活動が拡大する。その結果、支払われる手数料の総額やデータ投稿量が増加すれば、ETH需要はむしろ拡大し得る。これは価格×数量の関係であり、Ethereumは単価を引き下げることで数量を増やし、総需要を押し上げる設計思想を取っている。

ETHの需要構造は大きく三層に分けられる。第一に、ネットワークの安全性を支えるステーキング担保としての需要がある。第二に、ガス代やblob手数料として支払われるインフラ利用料としての需要がある。第三に、DeFiやRWA市場における担保資産としての金融的需要がある。レイヤー2の拡大は特に第二のインフラ需要を継続的に増幅させ、さらに金融市場の拡大は第三の需要を押し上げる。これらが同時に作用することで、Ethereum経済圏の成長は複合的にETH需要を支える構造となっている。

したがって、レイヤー2の成長はETHを不要にする動きではない。それはむしろ、世界中で生まれる多様な経済活動を最終的にETH需要へと変換する装置として機能しているのである。本質的に重要なのは、レイヤー1とレイヤー2のどちらが一時的に多くの手数料収益を得ているかではない。重要なのは、Ethereum経済圏全体でどれだけの価値が動き、その対価としてどれだけのETHが市場から回収され、さらにはバーンによって供給が圧縮されているかという点にある。

この構造を理解すれば、レイヤー2の拡大は単なるスケーリングの成功ではなく、ETHの希少性を高め続ける経済的エンジンそのものであることが見えてくるのである。