>>987
現在の欧州におけるRippleの動きを一連の構造として捉えると、それは「XRPを基軸とした国際送金インフラの再構築」ではなく、「規制対応を完了したステーブルコイン発行体として、既存のオンチェーン経済圏に流動性を供給する企業」へと役割を移行している過程だと理解できる。EMIライセンスの取得やMiCA対応は、そのための前提条件であり、主語は一貫してRipple社であって、XRPそのものではない。

仮に今後、RLUSDに続いてEUR建てステーブルコイン(RLEUR)が発行されるとすれば、その合理性はXRPLの利用促進ではなく、すでに実需と流動性が集中しているEVM互換圏へ直接入り込むことにある。欧州の銀行や企業は、EthereumおよびそのL2を中心としたスマートコントラクト環境と、ETH基軸・ステーブルコイン決済にすでに慣れており、EURとUSDの交換や清算はDEX上で直接完結できる。ここに、あらためて価格変動のあるブリッジ通貨を挟む合理性は存在しない。

この構造では、RLEURがEVM互換圏でシェアを伸ばせば伸ばすほど、XRPはブリッジ通貨としての役割からさらに遠ざかる。XRPを経由すればボラティリティや会計・リスク管理のコストが増える一方、ステーブルコイン同士であれば、規制適合性、処理速度、コスト面のすべてで優位に立つ。これは思想や好みの問題ではなく、実務設計の必然である。

結果としてRippleは、「国際送金の中継点としてXRPを使わせる企業」ではなく、「規制対応済みのUSD・EURステーブルコインを、EVM互換圏に供給する流動性プロバイダー」に近い立ち位置へと変化していく。この動きは裏切りでも迷走でもなく、オフチェーンの台帳同士をブリッジ通貨でつなぐという旧来の前提が、オンチェーンで直接接続される世界によって無効化されたことの自然な帰結にすぎない。

一方で、Ethereum陣営は特定の企業が前面に立たずとも、ステーブルコイン発行体、L2、カストディ事業者、伝統金融機関といった無数の主体が同時多発的に規制対応と実装を進めている。その結果、ETHはガス、担保、清算資産としてエコシステム全体に不可避的に組み込まれ、「使わない」という選択肢が存在しない基盤資産となっている。ここに、単一企業主導モデルと分散エコシステムの決定的な差がある。

多くの人が混同しがちなのは、「Ripple社の事業的成功」と「XRPの価値上昇」を同一視してしまう点だ。しかし、現在進んでいる欧州戦略は、むしろXRPを使わなくてもRipple社は成立することを明確に示している。XRPは使われる可能性のあるオプションではあっても、排他的・必須な基軸資産にはなっていない。

最終的に問われるのは、企業がどれだけ規制対応に成功するかではなく、その中核にある資産が「なくてはならない存在」になっているかどうかである。RLEURを含むステーブルコイン戦略が進めば進むほど、RippleはEVM互換圏への流動性供給者としての性格を強め、XRPのブリッジ通貨という物語は構造的に成立しなくなっていく。今起きている欧州での動きは、その現実をはっきりと浮き彫りにしている。