SWIFT がブロックチェーン技術を活用した新たな国際決済インフラの構築を進めているのは事実である。しかし、「その中核としてイーサリアムが採用され、標準として事実上確定した」とする見方は、現時点では行き過ぎた解釈といえる。

まず、SWIFT が公表している取り組みの本質は「特定チェーンの採用」ではなく、複数の分散型台帳技術(DLT)を相互接続するための実験的フレームワークにある。実証実験ではイーサリアム互換の環境(例:ConsenSys の Linea など)が用いられているが、これは技術検証の一環にすぎず、最終的な標準規格がEVMに統一されることを意味しない。SWIFT自身も「パブリック・プライベートを問わず複数のDLTネットワークと連携可能な中立的インフラを目指す」と明言している。

さらに、金融システムにおける「標準」の確立は、技術的優位だけでなく、法制度・規制・運用リスク・ガバナンスといった要素を総合的に満たす必要がある。イーサリアムの拡張技術(L2やZKロールアップ)によってスケーラビリティが大幅に改善しているのは事実だが、世界数千行規模の金融機関が法令遵守・AML・KYCを前提に運用するには、依然として課題が残る。特にパブリックチェーン特有の匿名性や検証コストは、金融当局との整合性をとる上で慎重な調整が求められる。

また、国際金融インフラの領域では、各国の中央銀行や大手金融機関が**独自の許可制DLT(Hyperledger、Corda、Quorumなど)を開発・採用しており、これらが地域単位で標準となる可能性も依然として高い。つまり、「どの通貨を使うか」から「どの技術標準を採用するか」への移行は進んでいるが、その勝敗はまだ決していない。

したがって、「SWIFTがイーサリアムを選択した」という表現は誤解を招く。より正確には、「SWIFTがイーサリアム互換技術を含む複数のDLTネットワークと相互接続する実証を進めている」と言うべきである。技術的互換性の高まりは評価すべきだが、それをもって金融インターネットの“標準OS”がすでに決まったと結論づけるのは尚早である。

結局のところ、国際送金の未来は「単一技術への集中」ではなく、「相互運用性を軸とした多層的エコシステム」の上に築かれていく可能性が高い。イーサリアムはその中で確かに重要な位置を占めるが、唯一無二の勝者とまでは言い切れない。標準化の本質は、競合を排除することではなく、異なる技術を繋ぐことにあるからだ。

だそうです