──猿渡先生は新人漫画家の中でも注目の存在だったわけですね。

食事会で、手塚先生は一人ひとりに気さくに声をかけてくださいました。
私たち新人漫画家はみんな手塚先生を大尊敬していますから、緊張しているわけです。

そこで手塚先生が猿渡さんに向かって
「あなたが猿渡さんですか。僕、あなたの絵を見たけど、上手いねえ」ってほめられたんです。
「虫眼鏡で見たけど、ひとつもデッサンが狂っていないね」って。猿渡さんは照れながら緊張されていました。
「手塚先生さすがだな。ちゃんと猿渡さんの絵を見ているんだ」って思いましたよ。

そうしたら手塚先生が「でもね。僕もあの絵は描けるんです。描こうと思えば、誰の絵でも描けるんです」って、猿渡さんに向かって言うわけです。