柔らかい的を「粘りけのある液体やゲル」のようなものだと想像すると、以下の3つの物理現象が理解の鍵となります。

1. 速度の2乗に比例する「抵抗の壁」
柔らかい対象(肉質、水、砂など)に高速で物体が突入すると、空気抵抗と同様の慣性抵抗が発生します。
一撃集中型(高初速): インパクトの瞬間の速度が極めて高いため、エネルギーの多くが、貫通ではなく「ターゲットを激しく弾き飛ばす」「熱に変わる」ことに浪費されてしまいます。
無反動型(分散): ピーク速度を抑え、代わりに「押し出す時間」を長くすることで、抵抗力の跳ね上がりを抑えつつ、効率よくエネルギーを貫通に回せます。
例: 水面を全力で平手打ち(一撃集中)すると、手は水面で弾かれますが、ゆっくり押し込めば(分散)手は深く沈みます。

2. 「衝撃波」によるエネルギーの散逸
柔らかい対象に強い衝撃を与えると、エネルギーの一部が「音」や「振動(衝撃波)」として周囲に拡散してしまいます。
一撃集中型: インパクトが急激すぎるため、矢の先端付近の素材が急圧縮され、そのエネルギーが横方向の衝撃波として逃げてしまいます。
無反動型: 衝撃の立ち上がりが緩やかなため、標的の素材が変形する余裕が生まれ、エネルギーが周囲に逃げにくく、矢の進行方向に集中しやすくなります。

3. 「動摩擦」と「静止摩擦」のジレンマ
物体が貫通する際、最もエネルギーを食うのは「止まりかけた状態から再び動く」ときです。
通常の矢は、大きなインパクトの後に急激に減速します。
無反動矢は、最初の衝撃の直後に「内部の重りによる追撃」が発生し、低い抵抗(動摩擦)の状態を維持したまま深く潜り込むことができます。

結論:なぜ柔らかい的に分散型が効くのか
一言で言えば、**「柔らかい的は、強く叩けば叩くほど、硬く反発してくる(非ニュートン的な性質)」**からです。
硬い的(鎧など): 表面の「破壊しきい値」を突破する必要があるため、エネルギーを一点に凝縮した**パワー(Force)**が必須。
柔らかい的(肉体、泥など): 表面突破は容易だが、内部の「粘り(Drag)」が敵。エネルギーを無駄に散らさない**効率(Efficiency)**が重要。

無反動矢は、まさにこの「柔らかい的におけるエネルギー効率」を最大化する設計と言えます。