◎バレ
「はい。滑皮さんはもうおしまいです。丑嶋君を怒らせてしまいましたから」
密会している戌井と豹堂。豹堂はジロッと睨む。
「理由が腑に落ちねェな。あの逃げ回っていた金融屋が何だって?」
戌井、らめり皮に影響されてそうな顔で宙を見上げる。
「丑嶋君は獅子谷を倒してしまいましたから」

回想シーン。丑嶋の中学時代、不良たちが俳句会を開いている。
無数の不良や暴走族に紛れて戌井も見守っている。

最初に丑嶋が動いた。
丑嶋「たわたわと 薄氷に乗る 鴨せいろ」
すると、辺りから唾を飲む音や腹の音が鳴った。
(「たわたわと」が効いているな。今にも割れそうな薄氷の上で、鴨せいろが躍動感を放っている。情景のシュールさ以上に、暖かい鴨せいろを食べたい気持ちにさせられる。鴨そばと違って、出来立てでもかき込んで体を温められる……意外と技巧的だな。丑嶋君)

次に滑皮だ。
滑皮「秋風や 屠られに行く 丑のシマ」
すると悶主陀亞連合から「丑嶋ももう終わりだぜ」と声が上がった。
(体の模様に焦点を当てたことで本歌より叙情的で物寂しさが感じられる。あの模様を縞と言い切る豪腕に、丑嶋君への執念も感じて薄ら寒い思いだ。それにしても漱石を知っていたなんて意外だな、滑皮さん)

最後に獅子谷弟が一歩前に出た。
甲児「分け入っても 分け入っても 一個謎」

「句会はそれで終わりでした。他の不良は誰も前に出られませんでした」
「丑嶋君はこれから来る冬を、滑皮さんは現在の秋を詠みました」
「でも獅子谷は虚無です。その底に何も見えない深い闇です」
「誰もが獅子谷に畏怖しました。滑皮さんすら、内心怖れていたはず」
「そんな獅子谷を倒した丑嶋君には……滑皮さんではもう及びません」
「今の心境を素直に言えば、『マグネターは、怖い』です」

豹堂、なぜかやや情けない顔で
「そうか」